2017年6月15日付けにて水産庁漁場資源課から、「水産分野における産業管理外来種の管理指針」の制定案についての意見・情報の募集についてというパブリックコメントが農林水産省のHPで7月14日までの期間で始まりました。

パブリックコメント:「水産分野における産業管理外来種の管理指針」の制定案についての意見・情報の募集について



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一見、何のことだかは分かり難いと思いますので、私流にちょっと解説したいと思います。


管理指針の策定経緯及び趣旨
環境省、農林水産省及び国土交通省は、我が国における外来種対策を総合的かつ効果的に推進するたの外来種被害防止行動計画(以下「行動計画という。)を策定するとともに、環境省及び農林水産省は、外来種についての国民の関心と理解を高め様々な主体に適切な行動を呼びかけることを目的とした、我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト(以下「外来種リスト」という。)を作成し、公表しているところ。

この中で、ニジマス、ブラウントラウト及びレイクトラウトは、産業管理外来種(産業又は公益的役割において重要で代替性がなくその利用にあたって適切な管理が必要とされる外来種)に分類されている。産業管理外来種の利用にあたって、関係者は、外来種リストにおいて種ごとに示された利用上の留意事項に沿った管理に取り組むこととされている。

今般、水産庁は、ニジマス、ブラウントラウト及びレイクトラウトについて、都道府県や研究機関等の協力を得て、生物学的及び社会経済的な調査を実施したところ、分布や再生産の状況、産業利用の実態等に関する新しい知見が得られるところとなった。
こうした知見を踏まえ、産業管理外来種のより適切な管理を推進するために、水産分野における産業管理外来種の管理の基本的な考え方等を管理指針として示すこととしたものである。


要約すると、ニジマス、ブラウントラウト、レイクトラウトは、産業管理外来種に指定されています。
産業管理外来種とは、産業または公益的役割において、重要で代替性がなく、その利用にあたって、適切に管理することが必要な外来種とされています。

今回、水産庁は、ニジマス、ブラウントラウト、レイクトラウト(以下、「ニジマス等」という)について、色々な調査をしたところ新たな発見があり、、適切に管理するために基本的な考え等を管理指針として示すことにしたそうです。


では、その基本的な考え方ですが、

ニジマス等は、水産業のみならず地域経済の活性化に著しく貢献しているが、元来日本の在来種ではなく、不適切な管理により、管理地外に出た場合は生態系に被害を及ぼす恐れがある。
故に、外来種リストの利用上の留意事項の「これ以上の分布拡大をしない」に沿った管理をする必要があると考えています。


じゃあ、具体的にはどんな感じかというと、

①漁業協同組合、養殖業者などの漁業関係者には、管理の徹底や、情報収集、在来種の繁殖保護、私的放流防止等が求められています。

②遊漁関係者、管理釣り場の管理者、経営者には、私的放流の自粛(ただし、都道府県や共同漁業者に相談、水産試験場の助言等を踏まえ、対応を検討することができる)、管理の徹底等が求められています。

③都道府県・内水面漁場管理委員会には、上記①、②の指導、監督、分布や生態等の更なる把握に努めることが求められています。

④試験研究機関においては、分布や生態等の把握等が求められています。


公的規制による対応では、
(1)生物多様性の保全上重要な水域がある場合や、北方の高地や湖沼においてレイクトラウトの分布拡大を防ぐ必要がある場合
(2)ブラウントラウトについて、生息水域が拡大し、在来種との交雑種が確認されるなど、水産資源の保護培養上の懸念がある場合

上記2つのケースに該当する場合、地域の実情に合わせて内水面漁業調整規則や内水面漁場管理委員会指示等により、ニジマス等の移植を禁止する措置を取るということです。


また、新規に第5種共同漁業の免許(追加も含む)認定は、行わないことが望ましい。
ただし、個別の状況に照らし合わせ、是非を慎重に検討するとあります。


かなり、難しい内容ですが、要するに無闇に生息域が広がらないように管理しましょう。というような内容になっています。


このような内容になった理由を推測すると、

①多くの漁協で第5種共同漁業の免許が取得されており、一般的にニジマス等が市民権を得ており、収益が上がるものと認識されている。

②生態等の更なる把握と書かれているように、降海型のニジマス(いわゆるスチールヘッド)の生態は、未だに不明な部分が多く、懸念している河川回帰時の分布拡大の影響が未知数であること。

③北海道以外の本州以南では、放流による生息は確認されているものの、自然繁殖という点では不明瞭であり、なおかつ在来種との競合がそこまで大きくないこと。

が考えられます。
北海道では、イワナ等との生息域争いが問題化していますが、本州以南ではそこまで深刻ではないと思われ、管理面を強く書かれた内容になっていると思います。


これらを踏まえると、現状では大きな影響が出ない内容に思いますが、色々と窮屈になるようにも感じます。
また、北海道と本州以南とを同じように考えるのにも無理があるように思います。


レイクトラウトは中禅寺湖以外に生息しているという話は勉強不足で聞いたことありませんが、問題となっている地域があるのかもしれません。
中禅寺湖も元々魚がいなかったと言われていますから、自然の湖を使った管理釣場とも言えますね。


色々な視点、立場から言い分は変わってくると思いますが、生態系の保護という観点では、渓流魚の放流の方が余程問題があると思います。
既にそのように乱れてしまっている場所の生態系云々と言っても、どれほど意味があるのか分かりませんね。


そんな訳で長々と書きましたが、そんなことを中心に管理するという考えには賛同し、パブリックコメントの意見を書いてみました。


バスの時と同じような結末は取りたくないので、皆さんの意見もぜひお願いしたいと思います。
パブリックコメントは、7月14日までです。



そういえば、東京都の築地移転問題について、橋本徹元大阪府知事がコメントしていましたね。
これを読んで、ブラックバスの外来生物指定の流れとまったく同じだな~と思ってしまいました。
最後の最後できっと独断で決めてしまったんでしょうね。

やっぱり、人間は簡単には変われないんですね~。